№113 田尻の忠犬
2009年 04月 06日
鼓ケ浜も埋立てられていず、後ろの山との間の僅かの平地の前は鉄道線路、並行して国道と広電宮島線が走りその前は海。国道に出るには踏切もない鉄道線路を渡らなければならなかった。
そこにあるお年寄りが住んで居られたが、一番近い商店は阿品で唯一の藤川商店のみ。店に行くには鉄道線路を渡り、国道沿いに一㎞くらい歩いて行く必要があった。
お年寄りにとって店に買物に行くにはきつかったが、そこで飼っている犬が買物に行っていた。買物かごを首に下げてもらい、中に買う商品を書いたメモとお金が入れてある。
その犬は自分だけで踏み切りを渡り、国道沿いに歩いて店まで行っていた。お店の人も心得たものでその犬が来店すると、かごの中のメモを見て必要な商品とお釣りをかごに入れ首に掛けていた。店の用事が済むとまた家まで帰って来るのである。
当時は鉄道を通る列車本数も少なく、国道も今では考えられないほど交通量も少なかったが、それにしても感心な犬であった。
阿品の人々は「田尻の忠犬」と呼んでいた。
写真の犬は「田尻の忠犬」ではない。