1023 煙草   

 現在では屋外でも喫煙を禁止されているところが大半であるが、当時は何処でも吸い放題であった。執務中でも自席に灰皿があり煙草を吸いながら事務を行っていた。成人男子はほぼ全員が煙草を吸うのが当たり前であった。中には煙草を吸わない人があったが、あの人は大人になったのにタバコも吸わない変わり者だ言われる有様であった。
 煙草を吸っていると隣の席に女姓がいると、「煙が来ないようにしてほしい』言おうものなら「我慢しろ」と注意した女性が悪いように言われることもあった。窓が開放してある時期は兎も角、冬場など窓が閉め切ってあると、部屋中に煙が充満していた。

 煙草を吸わない数少ない人がせっせと吸殻を集める人があったので、「何に使われるのですか」と聞くと、「娘の嫁ぎ先が農家で段々畑の石垣の穴から蛇が出るが、隙間に煙草の吸殻を詰めると蛇が出てこない」と言っておられたが効果があったのだろうか。

 煙草には煙草税か専売公社納付金か分からないが,煙草が購入された自治体には売り上げの応じてお金が入っていた。これが年間にはかなりの額となるため、「煙草は町内で買いましょう」とポケット灰皿などを配り、まるで煙草を吸うのを奨励するような有様であった。通常の税などであれば税額を計算し納付書を発行するなど手間暇掛かるが、煙草に限って黙っていてもお金が入っていたようである。

 当時は事務中の喫煙はおろか、バスなどの公共機関内にも灰皿が常備されていて、車内中煙が充満していた。今では考えられないが文句を言う人も無くこれが当たり前であった。

 こうした状態も健康面で煙草の害が指摘されるようになり、室内はおろか屋外でも煙草を吸える場所は限られるようになっている。昔は成人になれば煙草を吸うのが当たり前であったが、今ではむしろ喫煙者の方が少数者となってしまった。
 それにしても昔は煙草を吸わない人は、文句も言わず良く我慢していたものである。

by hirosan_kimura | 2025-03-02 11:10 | Comments(0)

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