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by hirosan_kimura

№605 船霊(ふなだま)さん

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 その昔、地御前の漁師の間で不思議な信仰があった。それは「船霊(ふなだま)さん」と呼ばれていた。地御前の浜で作られた船には船霊さんを納めていた。船霊さんは船の守護神として信仰される神様であるが、「船神(ふながみ)」さんとか「おふなさま:と呼ぶ人もあった。

 船霊さんは時化(しけ)や不慮の事故による災難や、大漁などを前もって船頭さんに知らせてくれる神様である。

 地御前では新しい船が造られると船おろしの儀式が行なわれていたが、その儀式の前に船霊さんを新造船に納めていたがこれを「お性根(しょうね)を入れる」と言っていた。

 船霊さんは、男女ニ神・サイコロ二個・五穀・一文銭十二個を小さな箱に納め船の胴梁の中央に納めていた。ご神体は紙を二つ折りにして作り、五穀は米だけを少々入れていた。一文銭はその年の月の数だけ入れるので閏年には十三枚いれていた。サイコロは船大工が余り木などで作っていた。その数字は波が穏やか魚がたくさん獲れて荷が一杯になるようにとの願いが込められていた。

 船霊さんは鈴虫の鳴くような声で、時化(しけ)や災難の前兆の時は激しく、大漁の時は機嫌よく鳴かれるそうである。そしてその声は昼間より夜の方が良く聞こえていたそうである。船霊さんの鳴き声は誰にでも聞けるものでなく船頭か船主だけに聞こえるそうである。船霊さんの鳴き声で吉凶を判断できるのは、長年の経験と勘によるもので船頭の力量にによると伝えられていた。

 また、船霊さんは漁の時だけでなく船頭さんにまとわり付いて、船を降りても付いて来られることもあったそうである。

 不思議な信仰であるが、今でも地御前の漁師さんの間でこのような信仰が残っているのであろうか。
by hirosan_kimura | 2014-01-28 12:27 | 伝説民話 | Comments(0)