№430 昔の旅
2012年 03月 17日

現在国内であれば自由に行き来できるが、江戸時代には一般庶民の旅行は厳しく制限され、物見遊山の旅などは禁止されていたらしい。
しかし、近世中期以降になると、伊勢参拝・四国遍路・京参りなどが出来るようになった。それでも要所には関所が設けられ、「往来手形」の携行が義務付けられていた。
庶民が旅をする時は,庄屋か旦那寺を通して「通行手形」が発行されるが、本人の名前・居住村・行き先・目的・宗派などが記載されていた。
寛政十一年、今から213年前 地御前の若衆が金比羅宮を参拝した際の「通行手形」である。
往来手形之事
一 芸州佐伯郡地御前浦 久兵衛
右之者宗旨者代々浄土宗当寺檀那ニ無紛
御座候此度四国中為巡拝罷出申候問国々
所々御関所無相違御通可被下候尤此者自
然致病死等候節者御国法遣以宜御取計被
仰付可被下候尤国元御付届不及申候為後
日一札仍如件
寛政十一年未七月 日
芸州廿日市 潮音寺
久兵衛の通行に当たってはよろしく便宜を図って下さい。途中で病死などした場合は、そちらの風習に従って始末して頂きたいとでも書いてあるのだろうか。
廿日市の潮音寺は現在でも在るが、地御前の久兵衛は同寺の門徒であったのであろう。今では地御前の人が潮音寺の門徒であることは余り耳にしない。
なお当時の旅支度に必要な物は、衣類・脇差・三尺手拭い・頭巾・ももひき・脚絆・旅・こうかけ(手足の甲に掛ける)・下帯・扇・やたて・湯手拭い・鼻紙・道中記・心覚手帳・銀袋・大財布・巾着・刺刀・耳かき・きり・小硯箱・小算盤・秤・大小風呂敷・くすり・薬袋・針糸・髪結い道具・煙草道具・提灯・ろうそく・つけ木・合羽・すげ笠・手ごり・弁当・網三すじ、などとなっている。
現在でも泊りがけの旅行となると準備が大変であるが、当時の旅支度はさぞ大変だったであろう。
by hirosan_kimura | 2012-03-17 11:39 | 娯楽 | Comments(2)

