№131 結婚式とお地蔵さん
2009年 04月 24日
国道すぐそばの騒音の中で、今では静かに鎮座しておられるが、一昔前まではこのお地蔵さんは事あるごとにあちこちの家に連れて行かれていた。
かつて阿品では結婚式の際に、ひそかにお地蔵さんを結婚式のある家に運び込むと言う風習があった。
いつごろこの風習が無くなったかは分からないが、今ではそのようなことをする人はいない。
結婚式の当日、近所の親しい若者達が近くのお地蔵さんを、婚家の人に見つからないように運び込んでいた。鰆浜のお地蔵さんや、今はふじタウンの坂を下りた所に安置されている「教え地蔵さん」が運び込まれていた。
「教え地蔵さん」は今でこそ民家の近くにあるが、昔は大野に山越えをする、阿品の谷の奥に居られた。(№7参照)
運び込まれるお地蔵さんは、多い時には7~8体になることもあり、地御前や大野のお地蔵さんも運び込まれることもあったと言うことである。
運び込まれた家では後日、お地蔵さんの赤い前垂れを新調して、元あった場所に返さなければならなかった。
重いお地蔵さんを元にあった所に返すだけでも大変であったが、見慣れないお地蔵さんを返すには、どこに居られたお地蔵さんかも分からず、運び込まれた家では元の場所を探すのが大変だったらしい。
何故このような風習があったのかは分からないが、「お地蔵さん」は座りが良い。嫁いできた花嫁さんにその家に居座ってもらいたいと言う願いと、楽しみの少なかった田舎での、運び込む若者達がいたずらをして喜ぶと言う面白さが半分あったのではなかろうか。
この他に式が済んで宴会中に、羽織・袴の花婿を数人の若者が無理やり連れ出し、泥田に投げ込んで面白がる風習もあったと言うことである。
花嫁を先に迎えられた若者のやっかみから始まったものかも知れない。一張羅の晴着を泥だらけにされるのもいい迷惑であっただろうが、昔から伝わる風習でもあったし、お祝いの気持ちも込められていたので、怒るに怒られなかったそうである。
今ではこんな風習は残っていないが、阿品以外でもこのようなことがあったのであろうか。
by hirosan_kimura | 2009-04-24 04:50 | 冠婚葬祭 | Comments(0)