新年度より庁舎を離れて給食センターへの配置換えとなった。当時は庁舎外への配置は「島流し」「左遷された」など揶揄されていた。以前、住民課厚生係から水道事務所に配置換えとなった時は情けないと思ったことがあったが、思ったより居心地が良く良い体験が出来た思った。 今回の給食センターへの配置換えに当たっては、教育委員会を追い出されたのだと勝手な事を言う者もあったが、教育委員会の雰囲気に馴染めかったので解放されたようで肩の荷が降りた。
新しい職場はこれまで経験したことのないような職務であったが、保育所では三歳児以上の給食は給食センターで調理されたものが配送され、センターの献立委員会に参加していたし、保育所とセンター間の調理員交流もあり、馴染みのある職場でもあり違和感はなかった。保育所担当時代にセンター給食の試食にも行ったので、センター職員とも顔馴染みも多かった。
新しい職場の人事体制は、所長1人・事務員1人・栄養士2人・運転士4人・ボイラー技士1人・調理員34人、合計43人の大世帯であった。前任の教育委員会社会教育課は課長以下8名の少人数と比較して、これだけの人数を纏めきれるのか不安な気持ちになった。
職員形態も様々で、所長・事務員は町職の男性、栄養士二人は女性県職員、運転士四人は町職男性、ボイラー技士は嘱託で元国鉄蒸気機関車の運転経験のある人であった。調理員は町職男性5人・町職女性12人・パート女性17人と多岐多様であった。
おまけに個性の強い人が多く、運転士は元町長車運転経験者と作業車運転経験者との間に過去の確執があるのか、何かにつけて対立があり配送業務に支障をきたすことがあった。
また過去の給食センターでは伝説的に知られたことであるが、女性調理員同士で派閥があり調理作業中でもいさかいが絶えず,異様な雰囲気が続いたそうである。保育所調理員等との交代人事等で派閥解消を計ったり、年長者の定年退職等により、以前とは相当和やかな雰囲気に変わっていた。ある時、二階の事務室で執務していると突然、年長の調理員が泣きながら駆け上がってきて「帰らしてもらいます。」と訴えた。どうしたのかと確認すると「○○調理員が意地悪で自分の作業を妨害する。」とのことであった。前所長から「派閥の名残が残って居り、時には諍いもあろうが、下手に仲介するよりほっておくほうが得策である。」と助言してもらっていたので「今日は早退して家に帰った方が良かろう。」と帰ってもらった。翌日は両者とも何もなかったように作業をしていたので安堵した。
栄養士の二人は県職員で県教職員組合に属していた。県教祖の組合員から見れば「廿日市町職員労働組合」の活動はもどかしくて堪らないらしい。二人の内一人は組合活動に熱心であった。何かにつけて意見が合わないので、廿日市の職員に県教祖の活動を引き込まないよう注意すると「今の所長の言葉は問題発言だ。県教祖に訴える。」と言うので「どうぞ訴えて下さい。」言い返しておいた。その後何らかの行動が有るかと思えば、何もなかった。
この職員は給食センター職員に組合活動の勧誘に熱心であった。あまり過激な言動に年長者は同調するものいなかった。若い職員の中に一部は感化されるものもあったが、限られた少数者のみであった。
月一回の給与は銀行振り込みが通常であるが、県職員の二人分については「広島銀行廿日市支店」に受領に行っていた。給食センターでは二人分のもであるが、支払日には学校関係の職員がたくさん来ていた。廿日市では広銀支店が近いので問題ないが、支店のない遠方の人は多額の現金を持ち帰られるのは大変であろう。県職の栄養士に「何故 銀行振り込みにしないのか。現金受け取りが良いのなら自分で銀行に取りに行けば良いのに」と聞くと、「給与は現金で支払うのが大原則である。管理者が纏めて受け取りに行くのが当然だ」といった。何か言い返そうかと思ったが、相手は組合活動等の精通者であり言っても言い返されるばかりなのでだまっていた。
給食センターでは様々な職種・個性豊かな人が多かった。何かあれば町職男性職員と相談していた。この人はかなり年配で退職の近い人であった。本来ならば何事も相談すればよいが、性格は良い人であったが浮世離れしたような相談しても、見当はずれのような回答ばかりであった。
こうした中、唯一頼りになった人がボイラー技士の方であった。国鉄を退職されてかなり経過した年配の方であった。とても人格者で穏やかな人であった。長年センターのボイラー技士を務められセンターの内部実情に精通しておられた。職員間の人間関係にも詳しく相談事に乗って貰い知恵を授かった。何かあるとボイラー室に行き座り込んで話すのも気がまぎれた。
退職後も年賀状のやり取りをし安否を確認しあった。終わりごろは字も崩れ読みにくかった。最後ころは口述を娘さんに代筆して貰われたが、亡くなられて久しい。公務員生活の中でお世話になり忘れることのできない方の一人である。