№110 子どもの花見
2009年 04月 03日
花見が近づくと何日も前から家の裏の山に行き、周囲に山つつじがたくさん咲いているような所を選び、弁当を食べる場所を平にしたり、邪魔になる雑木を除いたりして、秘密の場所のような所を作っていた。
その日になると弁当が出来るのが待ち遠しく、母親をせっついて作って貰っていた。今の子ども達は毎日ご馳走を食べているので、少々のご馳走では満足しないであろうが、当時は質素な弁当でも大ご馳走であった。
弁当の中身は、海苔巻き・玉子焼き・かまぼこを切ったもの・豆を煮たものなどである。今は家庭では余り作らないが羊羹が必ず有った。赤や緑の色の付いた寒天を弁当箱などに流して作っていた。
近所の子ども達と裏山に行き、きのうまで作っていた場所に茣蓙を広げる。食事前には周りの山で駆け回ったり、かくれんぼなどをして一時を過ごす。
昼になるのが待ち遠しく早い時間にご馳走を食べまた遊ぶ。しばらく遊んでまた弁当を食べる。たわいの無いことで一日を山で過ごすのである。
遊び飽きた頃、麓にあった阿品で唯一つあった「藤川商店」にお菓子を買いに行き、また山に帰って食べたりしていた。その頃もらえる小遣いは僅かな額でたいした物は買えなかったが、とても楽しかった思い出がある。
当時良く飲んでいた飲物で「とっぴん」が在った。金額は良く覚えていないが、一瓶が五円か十円くらいではなかったであろうか。
ひょうたん型の瓶に色のついたにっけいの様な味がする飲物であった。「とっぴん」とは何が語源なのか、正式な名前だったのか分からないが、面白い名前であった。ふたはコルクの栓であったような記憶もある。
翌日もご馳走の残り物などを折箱に詰めてもらって、また山に行って近所の子どもちと楽しい一日を過ごすこともあった。
一昔前までは学校が休みになると、阿品の野や山、海岸付近では子ども達の歓声が、一日中聞こえていたが今はあまりそのようなことは見受けられない。
たまに公園で数人の子ども達が遊んでいるのを見かける程度である。今の子ども達は何をして、一日を過ごしているのであろうか。
今の花見は公園に行ったり、桜の名所に行くくらいで、裏山に行って弁当を食べたりすることは余り見かけないが、花見のシーズンになると、子どもの頃の楽しかったことを思い出す。