№147 阿品の言葉 3
2009年 05月 20日
「医者殺し(いしゃごろし)」とは穏やかな言葉ではない。
阿品の人でも、この言葉を良く知っている人もあれば、聞いたこともないと言う人もある。誰かがかってに言い出した言葉で、一部の者だけが言っていた言葉かも知れない。
この言葉は焼き魚や煮魚を、無駄なくきれいに食べると言うことである。
今は魚より肉が好きな子どもが多いいが、昔は肉などは滅多に食べることはなく、煮魚や焼き魚を良く食べていた。
それも魚屋さんで買うのでなく、釣ったり貰ったりしていたものである。形の揃った大きな魚でなく、いろんな魚があり大きさも様々である。
今ごろの人の魚の食べ方を見ると、食べた身より残った身の方が多いのではないかと思うこともある。
また食べた後は皿の上がぐちゃぐちゃの事もある。
「医者殺し」の食べ方とは、小さな身ひとつ残らずきれいに食べることである。
背びれの小骨に付いた小さな身も箸を使って全て食べる。尾に付いたひとかけらの身も残さない。内臓を包んでいた身もほぐして食べるのである。
頭も崩して、あごの周り、目の周辺、ひれの回り、頭の骨の中にある身もすべて残らず食べ、最後には頭の形が無くなるまで崩して食べつくすのである。
こうして丁寧に食べて骨だけが残ったような魚を、茶碗などに入れて湯を掛けてかき回し、その汁も吸い尽くすのである。
このようにして魚を食べるとみんな健康に成り、誰もお医者さんに行かなくなるので、お医者さんにとっては死活問題になると言うのである。
魚の身をきれいに食べ、残った骨に湯を掛けて飲んで健康になるのかは疑問である。
生き物を食べさせてもらうのだから、粗末な食べ方をしてはならないと言う教訓から生まれた言葉かも知れない。